特許法では、物の発明、方法の発明、製造(生産)方法の3種の発明があります。
一般には、プロダクト・バイ・プロセス・クレームとは、物の発明を製造方法によって特定したクレーム(請求項)と言われています。特許庁は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームとは、物の発明について、特許請求の範囲の請求項にその物の製造方法が記載されている場合(のクレーム)としています。
化学分野、バイオ分野などでは、物を構造などで表現することが難しいことがあり、精製方法などの製造方法の複数ステップを使うことで最終生成物を特定する場合などにプロダクト・バイ・プロセス・クレームは使われています。プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、数値限定を伴うことも多いです。
例としては、以下のとおりです。
特許請求の範囲
[請求項1] ・・・の構造を有し、×××の酸化物からなる酸化物半導体膜を活性層とする薄膜半導体素子であって、
上記酸化物半導体膜は、金属酸化物のターゲットを用い基板の表面温度を○℃~△℃とするスパッタリングにより、基板上に形成されていることを特徴とする薄膜半導体素子。
特許請求の範囲
[請求項1] 水、油性成分、乳化剤、成分A、及び成分Bを含有し、粘度が○~△mPa・sのクリーム状の食品用水中油型乳化組成物であって、
前記乳化剤として、乳化剤X及び乳化剤Yを、乳化剤X/乳化剤Yの重量比が10~20/30~40であるように含み、
前記乳化剤、成分A、及び成分Bを含む油相を予め混合撹拌することにより調製した後、得られた調製物を、水相に添加し、乳化して得られるクリーム状の食品用水中油型乳化組成物。
特許請求の範囲
[請求項1] 空気流通口を有するホルダと、
前記ホルダ内に配置された香気発生源及び発熱体とを有し、
前記香気発生源は、活性炭成形体を含み前記発熱体によって○℃~△℃の範囲に加熱される芳香器であって、
前記香気発生源は、香気成分Aの溶液を含浸させた前記活性炭成形体を、前記発熱体による加熱温度以下の温度 で×時間以上加熱することによって製造される、芳香器。
プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する最高裁判決がありました(「プラバスタチンナトリウム事件」最高裁判決(最判平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号, 同2658号)))。判決を受け、特許庁では、プロダクト・バイ・プロセス・クレームに対する審査の取扱いを変更しています。
特許庁審査官が「不可能・非実際的事情」があると判断できるときを除き、当該物の発明は不明確であるという拒絶理由が通知されることに注意が必要です(特許・実用新案審査ハンドブック)。ここで、「不可能・非実際的事情」とは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情をいいます。