数値限定発明とは、特許請求の範囲において発明を特定する事項に数値を用いている発明です。
化学分野などでは、温度条件などの製造条件で数値範囲を特定して製造方法を特定する場合、物性、分子量などで化合物、組成物を特定する場合などに数値限定は使われています。数値限定は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームで使用されることも多いです。
例としては、以下のとおりです。
特許請求の範囲
[請求項1] 1分子中に3個以上のメルカプト基を有する化合物及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を40~50℃で5~10分間予備的に反応させ、
次に、当該反応により得られるオリゴマーを含有する反応液と、1分子中に2個のメルカプト基を有する化合物と、・・・を反応させて得られたことを特徴とする重合組成物。
特許請求の範囲
[請求項1] サトウキビ搾汁を、糖用屈折計の示度が70~80ブリックス度になるまで120~130℃で加熱濃縮して濃縮液を得る工程と、
該濃縮液を130~150℃で蒸留して得られる蒸気を回収及び冷却して蒸留液を捕集する工程とを順に経て得られる香味向上剤。
特許請求の範囲
[請求項1] HLB値9.5~11のポリグリセリンの脂肪酸エステル、ポリグリセリンのエチレンオキサイド付加物及びポリグリセリンのプロピレンオキサイド付加物の1種又はこれらの混合物を有効成分とする水に難溶で温水に容易に溶解することを特徴とする仮止め用接着剤。
数値限定発明は、特許要件の一つである進歩性の有無で問題が起こりがちです。
通常、数値限定が引用発明との相違点である場合は、進歩性がないと判断されます(特許審査基準)。
しかし、引用発明と比較した効果が以下の3つの条件をすべて満たす場合は、進歩性があると判断されます。
請求項の発明と主引用発明が課題が共通であり、数値限定の有無だけが違う場合は、数値限定に臨界的意義があるためには量的に顕著な差異が必要です。
一方、請求項の発明と主引用発明が課題が異なり有利な効果が異質である場合は、数値限定に臨界的意義は必要ではありません。
特許出願後の補正による数値限定の追加又は変更の際にも問題が起こりがちです。
新たな技術的事項を導入しない場合に許されます。
例えば、発明の説明に「24~25℃」という数値限定が記載されている場合は、請求項に追加することが許されます。実施例が24℃と25℃のときでも、「24~25℃」の数値限定を追加することは必ずしも許されませんが、例えば、課題、効果等の記載からみて、ある連続的な数値範囲の上限、下限等の境界値として記載されていると認められる場合は、数値限定の記載が当初からなされていたと判断され、補正が認められます。
請求項に記載された数値範囲の境界値を変更して新たな数値範囲を作る補正は、新たな数値範囲の境界値が当初明細書等に記載されており、かつ新たな数値範囲が当初明細書等に記載された数値範囲に含まれている場合に許されます。