医薬発明とは、ある物の未知の属性の発見に基づき、当該物の新たな医薬用途を提供しようとする「物の発明」です。
ここで、「物」とは、有効成分として用いられるものを意味し、化合物、細胞、組織、及び、天然物からの抽出物のような化学構造が特定されていない化学物質(群)、並びに、それらを組み合わせたものが含まれます。
「医薬用途」とは、(i)特定の疾病への適用、又は、(ii)投与時間・投与手順・投与量・投与部位等の用法又は用量が特定された、特定の疾病への適用を意味します。
医薬発明の上記の定義は、用途発明の定義を医薬分野に適用したものとなっています(特許庁審査基準等)。
医薬関連発明の保護され得る範囲には、単剤、組み合わせ剤、注射剤、経口剤以外にも、新たな医薬用途に基づく発明が、物の発明として特許となり得ます。一般に、医薬用途に基づく発明は、化学、バイオ分野に属しています。
一方、人間を手術・治療または診断する方法に関する発明とされる、医薬の投与方法といったいわゆる医療行為といわれるものは、産業上の利用可能性という特許要件を満たさないため、特許保護の対象となりません。
そもそも医薬発明とは、上記のように、あるものの未知の属性の発見に基づき、当該物ものの新たな医薬用途を提供しようとするものの発明です。ここで、物とは有効成分を意味します。医薬用途とは、特定の疾病への適用のみならず、投与時間、投与手順、投与量、投与部位等の用法または容量が特定された特定の疾病への適用も意味します。
例えば、化学物質Xについて高圧作用を発見したとします。この場合、化学物質Xを含有する高血圧治療剤という医薬発明になり得ます。
医薬用途の上記の定義に沿って、医薬発明に該当するかどうかについて検討します。
例えば、所定の用法・容量である疾患Z治療薬が、先行技術として知られていたとします。
この疾患Z治療薬と同一の素性を有する疾患Y治療薬という医薬品は、特定の疾病への適用という医薬用途の点で、新規性を有すると判断されます。
疾患Y治療薬の例は、喘息治療剤、血圧降下剤、抗アレルギー剤等です。
用法または容量が特定された特定の疾病への適用の点で、先行技術の医薬と組成及び 対象疾患が同一であっても、新規性を有すると判断されます。
例えば、疾患Z治療薬(△μg/kg体重、1日▲回)です。