食品の用途発明

食品の用途発明とは、(i)食品における成分などの未知の属性を発見し、(ii)この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明です。

以前は、食品においては用途による新規性を認められていなかったのですが、特許庁での取り扱いが変わりました。健康志向の高まりなどを背景にして、食品の機能性に関する研究開発が活発化し、企業からの要望などが高まったことから、食品の機能性に関する発明の保護を図るために、用途発明の一種として食品の用途発明が平成28年4月1日の審査から認められることになりました。

いわゆる「特定保健用食品」のような機能を有する食品について、その用途を見出した場合には、そこに新規性を見出し得るという扱いになります。

ただし、動物、植物は、用途限定が付されても、用途発明ではなく、単に用途限定のない動物、植物そのものと解釈されます。

 

食品の用途発明の例

グレープフルーツの果汁及びグレープフルーツに含有される成分Aに、歯周病の原因菌であるポルフィロモナスジンジバリスに対する抗菌効果があることを見いだした場合を考えます。この場合に、次の請求項1から請求項4は、食品の用途発明の例です。

  • [請求項1] 成分Aを有効成分とする歯周病予防用食品組成物。
  • [請求項2] 成分Aを有効成分とする歯周病予防用飲料組成物。
  • [請求項3] 成分Aを有効成分とする歯周病予防用剤。
  • [請求項4] 成分Aを有効成分とする歯周病予防用グレープフルーツジュース。

 

食品の用途発明になるかどうかの境界

特許庁は、審査基準において次の境界を設けて食品の用途発明に該当するかどうかを判断しています。

用途限定のないものとして解釈される発明

「○○用バナナ。」、「○○用生茶葉。」、「○○用サバ。」、「○○用牛肉。」

用途限定のあるものとして解釈される発明

「○○用バナナジュース。」、「○○用茶飲料。」、「○○用魚肉ソーセージ。」、「○○用牛乳。」

なお、「○○用剤。」との記載は、通常、動物又は植物を指すことはなく、食品分野においても、サプリメントや食品添加剤を示し、動物又は植物を包含するものではないと判断され得ます。

「○○用組成物。」、「○○用食品組成物。」との記載は、通常、当該用途に適した成分を何らかの技術的手段によって配合するなどして得られた物を指し、動物又は植物を包含するものではないと判断され得ます。

「○○用食品。」との記載は、明細書等の記載及び出願時の技術常識を考慮して、動物又は植物を包含すると判断される場合には、用途限定のない食品として解釈されます。

 

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