2014年ノーベル物理学賞受賞者の中村修二氏は、青色発光ダイオード(LED)、青色レーザーダイオード(LD)の材料として用いられる窒化ガリウム(GaN)の量産化技術の開発者として知られています。
次の特許権は、中村修二氏を発明者とする、「ツーフローMOCVD」と呼ばれるGaNを製造する方法に関するものです。「ツーフローMOCVD」とは、GaNの結晶を成長させるためにガスを2つの流れに分けて基板に吹き付ける方法です。別のガスを基板の上から吹き付けることで、基板に原料ガス流を押しつけ、結晶成長を可能としています。MOCVDとは、有機金属化学気相成長法のことであり、Metal Organic Chemical Vapor Depositionの略称としてMOCVDが広く用いられています。
この技術は、中村修二氏が日亜化学工業在職時に発明しました。職務発明の対価等を巡り、中村修二氏は日亜化学工業と争ったことで知られています。この訴訟は「中村裁判」(青色LED訴訟)と呼ばれ、日本の知的財産権制度や企業等に所属する開発者の待遇に関する議論を巻き起こしました。
特許出願及び特許査定の後の経過は、次のように、通常の特許出願及び特許査定の後とは異なるものとなっています。閲覧照会などの回数は、特許2540791「アニーリングによるp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法」及び特許2785254「ダブルへテロ構造窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」より少なく、「ツーフローMOCVD」の特許出願及び特許権の影響力の大きさ、重要性が、比較的小さいことを示しています。
特許2540791「アニーリングによるp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法」
特許2785254「ダブルへテロ構造窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」
特許権者 日亜化学工業株式会社
発明者 中村 修二
p型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。
【請求項1】
加熱された基板の表面に、基板に対して平行ないし傾斜する方向と、基板に対して実質的に垂直な方向からガスを供給して、加熱された基板の表面に半導体結晶膜を成長させる方法において、
基板の表面に平行ないし傾斜する方向には反応ガスを供給し、基板の表面に対して実質的に垂直な方向には、反応ガスを含まない不活性ガスの押圧ガスを供給し、
不活性ガスである押圧ガスが、基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に方向を変更させて、半導体結晶膜を成長させることを特徴とする半導体結晶膜の成長方法。
(産業上の利用分野)
この発明は、主として窒素化合物の半導体結晶膜を成長させる方法に関し、とくに、基板に反応ガスを噴射してその表面に半導体結晶膜を成長させる方法に関する。