ノーベル物理学賞受賞者の赤崎勇氏の特許出願

2014年ノーベル物理学賞受賞者の赤崎勇氏は、青色発光ダイオード(LED)の製作に必要な窒化ガリウム(GaN)の結晶品質を向上させるために、低温バッファ層技術を開発しました。バッファ層とは、サファイア基板とGaNの間に挿入される薄い層です。赤崎勇氏らは窒化アルミニウム(AlN)をバッファ層として用い、GaNのエピタキシャル成長(基板となる結晶の上に結晶成長を行い、下地の基板の結晶面にそろえて配列する結晶成長)を行いました。

この方法は、GaN単結晶層の成長直前に、GaNの単結晶成長温度(最適なエピタキシー温度:通常は約1,000℃)より数百度低い温度で、GaNや基板材料と物理的性質の良く似た材料をバッファ層として 、(基板の結晶学的情報のエピタキシャル成長層への伝達を妨げない程度の厚さに)薄く(50nm程度)堆積し、その後最適なエピタキシー温度(約1,000℃)に昇温してGaNの単結晶成長を行う手法です。これにより、GaNの結晶欠陥が減少し、高効率な青色LEDの実現につながりました。

次の特許出願は、赤崎勇氏を発明者とする、低温バッファ層を用いたGaNのエピタキシャル成長に関するものです。

ノーベルレクチャー講演概要 『青色光に魅せられて』 https://www.meijo-u.ac.jp/sp/meijoresearch/researcher/nobel/lectures.html

 

赤崎勇氏を発明者とする特許出願の内容

特許1708203

特許権者 国立大学法人名古屋大学
発明者 赤崎 勇、澤木 宣彦

【発明の名称】

化合物半導体の成長方法

【特許請求の範囲】

1 有機金属化合物とアンモニアガス(NH3)を水素ガス(H2)またはH2ガスを含む窒素ガス(N2)中で反応させてサフアイア基板上にAlXGa1-XN(x=0を含む)を少なくとも一層成長させる方法において、
Alを含む有機金属化合物、NH3及びH2が少なくとも存在する雰囲気中で、2分以下の短時間該サフアイア基板をAlNの単結晶が成長する温度より低い800℃~1100℃の範囲の温度で熱処理し、サフアイア基板上にAlNのアモルフアス薄膜を形成させた後、該熱処理したサフアイア基板上にGaを含む有機金属化合物、NH3及びH2が存在する雰囲気中で、サフアイア基板上のAlNアモルフアス膜が完全に単結晶化する以下の950゜~1150℃の範囲の温度でAlXGa1-XN単結晶(但し、0≦x≦0.3)を気相成長させることを特徴とする化合物半導体の成長方法。

発明の詳細な説明

(産業上の利用分野)
本発明はサフアイア基板上にAlXGa1-XNを成長させる化合物半導体の成長方法に関するものであり、特に有機金属化合物気相成長法による化合物半導体の成長方法の改良に関するものである。

(発明の効果)
本発明はサフアイア基板上に、GaAsなどで量産性が示されている有機金属化合物気相成長法により、均一で良質のAlXGa1-XN単結晶を成長させることができる。
従つて、現在高品質化や量産化が遅れている青色発光ダイオード、レーザーダイオード等の生産に本発明を利用することができ工業上大なる利益がある。

 

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