ノーベル物理学賞受賞者の中村修二氏の特許出願「ダブルへテロ構造窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」

2014年ノーベル物理学賞受賞者の中村修二氏は、青色発光ダイオード(LED)、青色レーザーダイオード(LD)の材料として用いられる窒化ガリウム(GaN)の量産化技術の開発者として知られています。

次の特許出願は、中村修二氏を発明者とする、量産化技術の一つである、窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の構造に関するものです。この構造は、GaNにインジウム(In)を添加したInGaN層を発光層とし、その層を、GaNにアルミニウム(Al)を添加したAlGaN層とGaN層で挟んだダブルへテロ構造となっています。分割出願も行われています。

 

特許出願及び特許査定の後の経過

特許出願及び特許査定の後の経過は、次のように、通常の特許出願及び特許査定の後とは全く異なるものとなっています。一般に、このような経過は、この特許出願及び特許権の影響力の大きさ、重要性を強く示すものです。

  • ファイル記録事項の閲覧(縦覧)請求書 28回
  • 異議申立書 1通
  • 訂正請求書 1通
  • 無効審判請求書 2通
  • 閲覧照会 25回

 

中村修二氏を発明者とする特許出願の内容

特許2785254

特許権者 日亜化学工業株式会社
発明者 中村 修二、向井 孝志

【発明の名称】

窒化ガリウム系化合物半導体発光素子

【特許請求の範囲】(訂正請求後の特許請求の範囲)

【請求項1】
n型窒化ガリウム系化合物半導体層とp型窒化ガリウム系化合物半導体層との間に、n型InXGa1-XN(0<X<1)層を発光層として具備するダブルへテロ構造の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子であって、前記n型窒化ガリウム系化合物半導体層、および/または前記p型窒化ガリウム系化合物半導体層のキャリア濃度が、前記InXGa1-XN層に接近するにつれて小さくなるように調整されており、前記p型窒化ガリウム系化合物半導体層は、キャリア濃度の大きいp+型GaN層と、p+型GaN層よりもキャリア濃度の小さいp型Ga1-ZAlZN(0<Z<1)層とからなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
【請求項2】
前記n型窒化ガリウム系化合物半導体層は、キャリア濃度の大きいn+型GaN層と、n+型GaN層よりもキャリア濃度の小さいn型Ga1-YAlYN(0≦Y<1)層とからなることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
【請求項3】
前記n型InXGa1-XN層は、n型ドーパントとp型ドーパントとがドープされてn型とされていることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
【請求項4】
前記p型窒化ガリウム系化合物半導体層は400℃以上でアニーリングされてp型とされていることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。

発明の詳細な説明

(発明の効果)
以上説明したように、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は、n型InGaNを発光層とするp-n接合のダブルへテロ構造としているため、従来のMIS構造の発光素子に比して、格段に発光効率、発光出力が増大する。また好ましくはn型InGaN層は、p型ドーパントおよびn型ドーパントがドープされたn型であれば、さらに発光出力が増大する。
さらに本発明の発光素子は、InGaN層を挟むnクラッド層、および/またはpクラッド層のキャリア濃度を活性層であるInGaNに接近するほど小さくしているため、活性層全体に均一に電流が流れ、均一な発光が得られる。発光素子の発光出力を最大にするためには、nクラッド層、pクラッド層とも前記構造とすることが好ましいが、いずれか一方でもよい。このようにクラッド層を変化させることにより、発光素子の発光出力を格段に向上させることができる。また、好ましくpクラッド層の電極形成層をp+GaN層とすることにより、電極とのオーミック性が良くなりVfを低下させて発光効率を向上させることができる。

 

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