化学、バイオ分野においては、スクリーニング方法は重要です。スクリーニングとは、大量の試料の中から特定の物質を検出することであり、新しい治療法や新薬の発見につながります。また、スクリーニングを用いることで、タンパク質や酵素の活性化に関する情報を得ることができ、それが新しい医薬品の開発につながることがあります。スクリーニングは、高スループット性、高感度性、高特異性を備えた方法を選択することが重要であり、それによって効率的な試験が実現されます。スクリーニング方法は、医薬品やバイオテクノロジーの分野に大きな貢献をしています。
スクリーニング方法自体は特許になり得ますが、例えば、そのスクリーニング方法によって得られた化合物、そのスクリーニング方法によって得られた化合物をスクリーニングする特定疾患治療剤などは、必ずしも特許になるということではない点に注意が必要です。
(1)試験化合物をR需要体に接触させる工程と、試験化合物がR需要体を活性化させるか否かを確認する工程を含むスクリーニング方法を新たに発明したとします。ここから派生して、(2)スクリーニング方法によって得られたR需要体活性化化合物、(3)スクリーニング方法によって得られたR需要体活性化化合物を含有する特定疾患治療剤はどのように特許庁の審査で判断されるか検討してみます。
特許庁審査ハンドブックによれば、一般に、スクリーニング方法によって得られた化合物や治療剤という包括的な発明は、特許要件の一つである実施可能要件違反と判断される可能性があります。すなわち、請求項に係る発明に含まれる化合物の構造的特徴とR需要体を活性化するという機能との関係が発明の詳細な説明には記載されていない場合には、当業者が構造的な定義がされていない化合物であって、R需要体を活性化できる化合物をどのように製造し使用するか通常は当業者に理解できないとされます。
したがって、請求項に記載された方法で目的の化合物を同定することができたとしても、得られた目的の化合物以外の化合物が請求項に係る発明に含まれるかどうかは、実際にスクリーニングを行わなければ不明であり、特定されていない化合物を無作為にスクリーニングすることは、当業者に過度の試行錯誤を求めるものであると判断されてしまいます。
この場合には、(1)スクリーニング方法は特許になり得ますが、それ以外の(2)スクリーニング方法によって得られたR需要体活性化化合物、及び(3)スクリーニング方法によって得られたR需要体活性化化合物をスクリーニングする特定疾患治療剤は特許にならない可能性が高いということになります。
[請求項1] 試験化合物をR受容体に接触させる工程と
試験化合物がR受容体を活性化させるか否かを確認する工程と
を含むスクリーニング方法