DeepMindによるAlphaFoldの特許出願

DeepMind Technologiesは、 Googleの子会社として機能する人工知能研究所でした。2010年に英国で設立され、2014年に Googleに買収され、2015年のGoogleの企業再編の後、Googleの親会社であるAlphabet Inc.の完全子会社になりました。さらに、同社は2023年4月にGoogle AIのGoogle Brain部門と合併し、Google DeepMindになっています。拠点は、イギリスのロンドンです。

タンパク質の構造は、その機能を決定しています。アミノ酸配列のみに基づいてタンパク質が採用する三次元構造を予測することは、50年以上にわたって重要な研究課題でした。

AlphaFoldは、類似の構造が知られていない場合でも、原子レベルに近い精度でタンパク質構造を予測することができる、DeepMindが開発したAIシステムです。AlphaFoldでは、ディープラーニングを用いて、入力された特徴量を処理し、距離マップを推定しています。

タンパク質構造予測は、ディープラーニングの目覚ましい成果により、Nature Methods誌が選ぶMethod of the Year 2021に選ばれています。この手法は、構造生物学のコミュニティに衝撃を与え、この分野の流れを大きく変えました。予測された構造に基づく仮説を検証する等のために実験は依然として不可欠ですが、タンパク質構造予測のためのディープラーニングベースのアプローチは、タンパク質の複雑でダイナミックな挙動を理解する上で、新たな可能性を切り開きました。

AlphaFoldは、少なくとも2億個のタンパク質の三次元形状を正確に予測しました。これは、4億年分の研究に相当します。100万人を超える科学者がAlphaFoldを使用したと発表されています。

参照文献
Highly accurate protein structure prediction with AlphaFold https://www.nature.com/articles/s41586-021-03819-2
Method of the Year 2021: Protein structure prediction https://www.nature.com/articles/s41592-021-01380-4
DeepMind AlphaFold https://www.deepmind.com/research/highlighted-research/alphafold
AlphaFold Protein Structure Database https://alphafold.ebi.ac.uk/
Google DeepMind https://en.wikipedia.org/wiki/Google_DeepMind
Google I/O 2023 https://twitter.com/Google/status/1656361526092001300

 

日本国内の特許出願状況

ディープマインド・テクノロジーズを出願人とするタンパク質に関する特許出願として、日本国内では、4件の特許出願が見つかりました。

  1. 特開2022-169654
    特願2022-130054
    「距離マップクロップを組み合わせることによってタンパク質距離マップを決定すること」
  2. 特表2022-501695
    特願2021-509189
    「予測タンパク質構造と実際のタンパク質構造との間の類似性を推定するジオメトリニューラルネットワークを使用してタンパク質構造を予測すること」
  3. 特表2022-501694
    特願2021-509152
    「距離マップクロップを組み合わせることによってタンパク質距離マップを決定すること」
  4. 特表2022-501696
    特願2021-509217
    「品質スコアの勾配を使用した反復的なタンパク質構造予測」

そのうち3件は、出願日が同一であり、国際段階から日本へ国内移行された特許出願です。残りの1件は、特願2021-509152(特許7128346)の分割出願です。分割出願の出願日は、特願2021-509152の特許査定後です。この特許出願を含むパテントファミリーは特に重要であると出願人等が認識している可能性があります。

 

DeepMindのAlphaFoldに関連する特許出願の内容

特許7128346

特許権者 ディープマインド テクノロジーズ リミテッド
発明者 アンドリュー・ダブリュー・シニア、 ジェームズ・カークパトリック、 フランス ローラン・シフル、 リチャード・アンドリュー・エヴァンズ、 ヒューゴ・ペネドネス、 チョンリ・チン、 ルオシ・サン、 カレン・シモニアン、 ジョン・ジャンパー

【発明の名称】

距離マップクロップを組み合わせることによってタンパク質距離マップを決定すること

【特許請求の範囲】

【請求項1】
所与のタンパク質に対する距離マップを生成するためのコンピュータで実施される方法であって、前記所与のタンパク質が、ある構造に並べられるアミノ酸残基の配列によって定義され、前記距離マップが、前記構造の中の前記アミノ酸残基間の推定距離を特徴付け、前記方法が、
複数の距離マップクロップを生成するステップであって、各距離マップクロップが、前記タンパク質の前記構造の中の(i)前記配列において1つまたは複数のそれぞれの第1の位置の各々にあるアミノ酸残基と、(ii)前記配列において1つまたは複数のそれぞれの第2の位置の各々にあるアミノ酸残基との間の推定距離を特徴付け、各距離マップクロップが、前記距離マップの真部分集合であり、距離マップクロップを生成するステップが、
前記配列における1つまたは複数の第1の位置および前記配列における1つまたは複数の第2の位置を特定するステップであって、前記第1の位置が前記配列の真部分集合である、ステップと、
前記配列における前記第1の位置にある前記アミノ酸残基および前記配列における前記第2の位置にある前記アミノ酸残基からネットワーク入力を決定するステップと、
前記ネットワーク入力を距離予測ニューラルネットワークに提供するステップであって、前記距離予測ニューラルネットワークが、距離予測ニューラルネットワーク重みの現在値に従って前記ネットワーク入力を処理して前記距離マップクロップを備えるネットワーク出力を生成するように構成される、ステップと
を備える、ステップと、
前記複数の距離マップクロップを使用して、前記所与のタンパク質に対する前記距離マップを生成するステップとを備える、コンピュータで実施される方法。

【請求項23】
1つまたは複数のコンピュータと、前記1つまたは複数のコンピュータによって実行されると、前記1つまたは複数のコンピュータに請求項1から19および22のいずれか一項に記載の方法の動作を実行させる命令を記憶した1つまたは複数の記憶デバイスとを備える、システム。

【請求項24】
1つまたは複数のコンピュータによって実行されると、前記1つまたは複数のコンピュータに、請求項1から19および22のいずれか一項に記載の方法の動作を実行させる命令を記憶した、1つまたは複数のコンピュータ記憶媒体。

J-PlatPat特許・実用新案照会(固定アドレス) 特許7128346

 

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